甲子園ホテルへ④ ジャパンなホテルの合理性


甲子園ホテルには和室があります。

この和室では京都の三嶋亭
スキヤキが振る舞われたそうです。
英文パンフレットにも
スキヤキディナが、
スキヤキディナールームとともに掲載、
ただし、外国人向けではなく…
ハレの日のごちそうをハレの空間で、
独特なものを提供していました。
各階廊下には
フロアステーション
設けられていました。
そこも和の空間。
林愛作の視点が、
日本人を中心としたところに
あったことを物語っています。

1927年の「理想的なホテル」という
林の寄稿にこうありました。
「…一家族投宿などの場合は、
 両親が西洋間に、子供三四人位は
 日本間に寝ることも出来て、
 お客としても便利であるが、
 経営者にとっても便利である。」と。

林は京都の木屋町の旅館にも
見学に行ったらしく、
日本に育まれた生活空間に
着目していたことが判っています。

パブリックなスペースとの区切りも、
壁ではなく階段差を巧みに活用。

いまではバリアといって、
嫌がられますが…
空間の印象の切り替えに
その技が見て取れます。

甲子園ホテルでは、
こんな工夫も…
パブリックスペースとも
渡り廊下で客室と分離され、
三部屋以外のお客さん
顔を合わすことの配置が
なされていました。
このホテルの意匠のテーマは
であったと言われています。
シャンデリアはがモチーフ。
四灯になるとこんな感じです。
メインダイニングには
さらにたくさんの
組み合わせで豪奢な姿。
今は建築学科の製図ルーム、
CADの実習に使われています。
照度はバッチリ!いい環境です。
ただ多くのフードが、
阪神・淡路大震災で飛んで、
割れてしまったそうです。
こちら屋上テラスの照明。
改修後に新しいものに
交換されています。
もとは乳白色のグラデーション、
展示ケースに保存されているもの。
こちらは屋上テラスの
屋根下にのこる吊環。
左右に繋げて
提灯を吊るしたとか…
夕涼みを楽しまれたのでしょう。

複雑なツクリの外壁ですが、
ブロックパーツによって
構成されています。
外壁パーツはこの二つくらい。
いくつかの濃淡で、
多彩なバリエーションが
組み上げられています。

内装にも。
打出の小槌からの雫も
パーツの組み合わせが秀逸。
軒下の波状もこんな感じです。
ヒーターガードも…
四角のパーツの組み合わせ。
複雑な塔の組み上げも。
基本パーツはブロック、
まさにレゴのようです。

左右対称のカタチも、
建物の軸が地下にあって、
いわゆるバックヤードが
仕込まれています。

そのことが電気水道などといった、
ラインが保持され長持ちのする。
先を見据えたホテルの合理性、
強く印象付けられました。

※このブログは三宅 正弘さん著の
『甲子園ホテル物語
 ―西の帝国ホテルとフランク・ロイド・ライト』
を参考にしています。

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