芦屋を駆け足にて① 芦屋市立図書館 打出分室

謎の洋館として知られる
芦屋市立図書館 打出分室」。
甲南女子大学さんでの研修の前に、
ランチ返上で芦屋を駆け足にて…
趣きのある扉には「松濤(まっとう)」とある。
美術品のコレクターであった
松山与兵衛という人が買い取って
当地に移築したと伝わる。
仏教美術の収納庫として使われたそうだが、
なぜ扉だけが中国風なのか
村上春樹さんのデビュー作
風の歌を聴け (講談社文庫)』で、
「古い図書館」として登場。
小川洋子さんの『ミーナの行進 (中公文庫)』では、
「蔓(つる)草が壁面を這(は)い、
 古めかしい両開きの扉には
 中国風の飾りがはめ込まれていた」とある。
敷地東寄りに建つ。
東と北の外壁は「ルスティカ
風」で
花崗岩が積まれているそうだ。

隅部は少し円弧状になっていて、
2連アーチ窓が配されています。
イタリア・ルネッサンス風とも…
移築されてきたのが
1930年ってことになってて、
芦屋市が買い取って図書館になったという。
分室のルーツは、
『芦屋郷土誌』(1988年)に
逸身銀行」の誤記とみられる
「逸見銀行」の記述があって、
これが通説となっていたそうです。


1、2階部分が現在の分室と酷似する
「東京貯蔵銀行大阪支店」
「大大阪画報」(大阪府立中之島図書館所蔵)より

ところが1990年ごろに、
大阪芸術大学の 山形政昭 教授が、
分室とよく似た
東京貯蔵銀行大阪支店」の写真を発見。
翌1991年には保存改修のメンバーだった
建築家の 姉川昌雄 さんが、
地籍簿上 角地にあったとみられるのに、
「逸身銀行」は両側を建物に
挟まれていたことが分かったのだとか。
文学ファンの図書室は
さらにミステリアスへ。

「芦屋市立図書館 打出分室」
??→旧松山家住宅 松濤館→
竣工年:1930年(昭和5)
改修年:1990年(平成2)
構造 :鉄筋コンクリート造2階建
所在地:兵庫県芦屋市打出小槌町2
【国 登録有形文化財】

神戸新聞 HP所載の記事を参考にしました。


※ルスティカ【rustica[イタリア]】
石造建築で、壁の表面を滑らかにせず、
目地(継目)を際だたせたり、石材面を突出させたり、
凹凸を目だたせて、
荒々しく力強い表情をもたせる技法をいう。
古代ローマ建築の一部にすでに現れていたが、
ロマネスク時代の中部イタリアの
城郭風邸宅に好んで用いられた。
ルネサンス時代のイタリア全土でパラッツォに使われ、
建築書などを通じてアルプス以北の
諸国でも大いに愛好された。石材のみでなく、
煉瓦造の壁のスタッコ仕上げにもしばしば適用される。
(「世界大百科事典 第2版』より)

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