絵にみる和食通⑫ 酒でうさばらし

司馬遼太郎さんの作品『花神』に
こんな一節ががあります。
「酒を飲まずにおれる人間は
よほどの悪党だろう、といった。
感情がもたないのだ、ともいった。
一日世の中で過ごすと、
もう人への憐憫やら世間への怒りやら
ときに攘夷問題についての憂悶やらで、
酒でも飲まねば夕方を迎えられない。」
「東方朔と美人図」葛飾北斎 画
(葛飾北斎美術館 蔵)
でもホントにウサを晴らすならば、
美女と一緒がいい。
和服美人に酌をしてもらう至福の時...
二人の前には桃が置かれている。
杯を差し出す主は東方朔という人物。
桃は見立て
つまり桃に所以のある御仁なのである。


「東方朔捧桃図」富岡鉄斎 画

東方朔は前漢武帝に仕えた文学者、
奇行が多かったとか。。。
仙女西王母
(さいおうぼ)の桃を
盗んで食べたことで長寿を得たのだという。

「布袋と寿老の酒宴図」岩佐又兵衛 画
(福井県立美術館 蔵)

まぁ〜虎次郎の宴席はいつもこんな感じかな...
この絵は 岩佐又兵衛(1578-1650)の筆。
芸術新潮にはこんな風に紹介されたことがあった
「父は信長に叛いた荒木村重
大虐殺をからくも逃れた運命の子は、
武士を捨て絵師になった。権威を笑い、
血に執し、エロスに酔った絵師」???

古典や故事の題材を求め、
復讐劇の長編大作絵巻などを遺した人。
”浮世又兵衛”とよばれ、
寛永期風俗画に大きな影響を与えた人で、
大津絵の元祖ともいわています。

実は又兵衛は体毛にこだわる作者と言われる。
布袋にも独特の体毛が描かれている...
ちなみに虎次郎は腹黒いと言われるが、
腹にも胸にも毛はないのである(〜ω〜)

ラストはコイツを...

「酒呑仙人図」曽我蕭白 画
(奈良県立美術館 蔵)


主題の典拠などは明らかでなく、
描かれている人物は
仙人といえる所業ではないが、
「酒呑仙人」と呼ばれている。

酒甕の栓を抜いて酒を呑む。
ここまでになると...
まさに酒に呑まされるってことになる。
酒呑の上体の筆致がオモシロイ。
おそらく筆先をグルグルとしたのだけども、
蕭白は自由奔放な筆づかいだから
ニセモノはすぐにバレてしまうのである。

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