だんだん松山⑨ ヨロズ ミドリのヤカタ「萬翠荘」


“松山城の麓の緑の
森の中に佇む邸宅”として
名付けられた「萬翠荘」。


戦後は「米軍将校宿舎」、
「家庭裁判所」、「県立郷土芸術館」、
そして1979年からは
「県美術館分館」として
使われていたそうです。
で… 今回は内部を案内していきます。

玄関部分のガラスの中央には「鳳凰」。

そしてここかしこに
梅の花」をデザインしたものが見られました、
実は久松家の家紋は「梅鉢」なのでして、
菅原道真の子孫
考えられていることに由来します。

「床下換気口」にも「梅鉢」。

玄関にある二つの柱は岡山産の
万成石(まんなりいし)」と呼ばれるもので、
桜御影と呼ばれるブランド石として貴重なもの。

イオニア式の柱の
柱頭の装飾は鋳銅製です。

何と言っても最大の見どころは
踊り場の帆船が描かれたステンドグラス

2010年の調査で 木内真太郎 によるもので
あったことが判明したそうです。
描かれている波と帆船は、
久松定謨フランスの
サンシール陸軍士官学校に入校したときか、
フランス公使館附武官就任の際に渡った
海原を思い起こさせるものと言われています。

木内慎太郎は宇野澤辰美、別府七郎らと共に、
日本で最初の本格ステンドグラス工房である
宇野澤ステンド硝子工場」を設立した人。
まさに日本のステンドグラス界の
パイオニアとも言える人です。

アール・ヌーヴォーに
グラデーションが取り入れられていて、

部屋ごとにデザインが異なります。

大広間には豪華なシャンデリアが
格天井から吊り下げらてていますが、
こちらは水晶で出来ているとか。

そして木彫家の 
相原雲楽 が手がけたとされる
たくさんの彫刻が
各部屋に彩りを添えています。

雲楽さんの装飾は
大阪市此花区伝法(でんぽう)にある
旧鴻池組本店」にも残されているとか...
そちらには木内真太郎の
ステンドグラスもセットであるそうです。
残念ながらこちらは内部非公開(;_;)

漆喰で作られた装飾にも、
部屋それぞれの意匠が施されています。

なかには「ハート」が
隠されているものもあり…


各部屋に設けられた大理石製の暖炉には
それぞれガスストーブがあり、
上部にはそれぞれベルギー製の大鏡
取り付けられていました。


大階段をとりまく欄干に使われている
南洋産のチークは材質の硬さが特徴ですが、
その素材をあえて使った
彫刻の技量が想像できます。
雲楽さんの腕の冴えを今に伝えています。
※参考文献 
『萬翠荘物語―国重要文化財』
 片上 雅仁 著, アトラス出版 (2012年)

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